はじめに
■ここで言う実際原価計算とは
SAPの品目元帳を利用した実際原価計算は、単に原価差額を売上原価と在庫に按分するだけでなく、品目ごとの採算を分析する等の目的により品目単位での実際原価を計算する、という点に主眼が置かれていると思います。
いわゆる「ころがし計算」を品目コード単位で実施していくイメージですが、本稿ではその手順を見ていきたいと思います。
■実際原価計算(ころがし計算)のイメージ

カスタマイズ
■品目元帳の有効化(SPRO>管理会計>製品原価管理>実際原価計算/品目元帳>有効化: 評価エリアの品目元帳)
評価エリア(プラント)毎に品目元帳を有効化します。当カスタマイズにて品目マスタを登録する際の価格決定区分の初期値を設定できるのですが、品目マスタの価格決定区分に’3’(シングル/マルチレベル)が設定されていないと品目元帳の対象とならないため、品目元帳を使うのであれば’3’を設定しておくのがよいです。
■通貨タイプの割当と品目元帳タイプの定義(SPRO>管理会計>製品原価管理>実際原価計算/品目元帳>通貨タイプの割当と品目元帳タイプの定義)
品目元帳タイプを定義して通貨タイプを割り当てます。特殊な要件がなければ、標準の品目元帳タイプを使用します。
■割当: 品目元帳タイプ -> 評価レベル(SPRO>管理会計>製品原価管理>実際原価計算/品目元帳>割当: 品目元帳タイプ -> 評価レベル)
評価エリア(プラント)に対して上記の品目元帳タイプを設定します。
■有効化: 実際原価計算(SPRO>管理会計>製品原価管理>実際原価計算/品目元帳>実際原価計算>有効化: 実際原価計算)
プラント毎に実際原価計算を有効化します。
■有効化: 実際原価での仕掛品(SPRO>管理会計>製品原価管理>実際原価計算/品目元帳>実際原価計算>有効化: 実際原価での仕掛品)
標準原価ベースで計上された仕掛品を実際原価で洗替る場合はこの設定を有効化します。
■品目元帳の本稼働開始(Tr-cd:CKMSTART)
必要なカスタマイズ設定が完了したら、当機能よりプラント毎に品目元帳を本稼働させます。
※本稼働後にカスタマイズの設定を変更すると不整合が生じる可能性があるのでご注意ください。
マスタ
■品目マスタ照会(Tr-cd:MM03)
品目マスタの会計ビューにある価格決定区分に’3’(シングル/マルチレベル)が設定されていないと品目元帳の対象となりません。
品目元帳の対象となる品目には正しく区分が設定されているか確認しましょう。
■価格決定区分変更(Tr-cd:CKMM)
品目マスタの価格決定区分を変更したい場合は当機能から行います。
実際原価積上実行
実際原価計算は原価計算コックピット(Tr-cd:CKMLCP)という機能で実行します。
処理の流れは以下の5ステップに分かれています。
①実行単位の作成
以下を入力して実際原価計算の実行単位を保存します。
| 項目 | 設定値 |
| 原価積上実行 | 任意のIDと名称を入力する。(この単位で実際原価計算が行われる。) |
| 期間 | 処理対象の会計年度と期間を入力する。 |
| アプリケーション | ACRU(実際原価計算)を選択する。 |
| プラント割当 | 利用可能プラントの中から処理対象のプラントを選択して割り当てる。 |
②処理対象の品目データの抽出
画面下部の「処理」という表の中にある「選択」の行に対して操作を行っていきます。
パラメータボタンを押下して実行時の入力パラメータを指定した後に、実行ボタン押下で処理が実行されます。
処理が終了すると正常終了orエラーの明細がログに表示されます。
③前頁の「選択」で抽出したデータに紐づくBOMの抽出などを行う。
画面下部の「処理」という表の中にある「準備」の行に対して操作を行っていきます。
まずは事前にロック解除ボタンを押下してロックを解除します。(解除に権限が必要です。)
次に、パラメータボタンを押下して実行時の入力パラメータを指定した後に、実行ボタン押下で処理が実行されます。
処理が終了すると正常終了orエラーの明細がログに表示されます。
④前頁で準備完了したデータに対して実際原価計算を行う。
画面下部の「処理」という表の中にある「決済」の行に対して操作を行っていきます。
まずは事前にロック解除ボタンを押下してロックを解除します。(解除に権限が必要です。)
次に、パラメータボタンを押下して実行時の入力パラメータを指定した後に、実行ボタン押下で処理が実行されます。
処理が終了すると正常終了orエラーの明細がログに表示されます。
この段階ではまだ計算を行っただけで、会計伝票の転記は行われません。
⑤前頁の計算結果をもとに会計伝票の転記処理を行う。
画面下部の「処理」という表の中にある「決算転記」の行に対して操作を行っていきます。
まずは事前にロック解除ボタンを押下してロックを解除します。(解除に権限が必要です。)
次に、パラメータボタンを押下して実行時の入力パラメータを指定した後に、実行ボタン押下で処理が実行されます。
処理が終了すると正常終了orエラーの明細がログに表示されます。
■転記される会計伝票のイメージ
当処理によって下図右側のような仕訳が月末日付で計上されます。
(金額や数量の例は前稿の「原価対象管理」と連動しています。)
また、在庫(B/S)に振った分は翌月初の振戻仕訳も合わせて計上されます。
(下記例で言うと、「原価差額(製品) 3,650 / 製品 3,650」が翌月初に計上されるイメージです。)
これはB/S勘定の場合は翌期への繰り越しが必要となるためです。

さいごに
カスタマイズの設定や実行時のオペレーションはそれほど難しくないと思いますが、金額や仕訳の流れが複雑なのでそれなりに難解なテーマだったのではないでしょうか。
本稿にて原価計算の入門編は以上となります。入門と言えども難しい内容だったと思いますが、実務では更に複雑な要件が絡んできて、カオスな世界観になりがちな領域です…。ただ、基礎が身についていれば応用的な論点に対しても対応できるようになってくると思いますので、何度も繰り返し実機と格闘してマスターしていただければと思います。

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