本稿では原価対象管理に必要なカスタマイズと、処理の流れを見ていきます。
処理概要
原価対象管理の大まかな処理の流れは以下の通りです。
| サイクル | 処理概要 |
| リアルタイム | コストオブジェクト(製造指図など)に実績を収集する。 |
| 月次 | 仕掛品の計上、原価差額の計上と分析を行う。 |
カスタマイズ
本章では原価対象管理で必要となる主要なカスタマイズを解説します。
■結果分析キー(SPRO>管理会計>製品原価管理>原価対象管理>指図別製品原価>期末処理>仕掛品>定義: 結果分析キー)
仕掛品計算の処理方法を識別するキーを定義します。
製造指図にこれを設定することで、その製造指図の仕掛品計算の処理方法が決定します。
■結果分析バージョン(SPRO>管理会計>製品原価管理>原価対象管理>指図別製品原価>期末処理>仕掛品>定義: 結果分析バージョン)
管理領域に対して、仕掛品計算を行うのに必要となる各種の設定を行います。
「財務会計への転送」にフラグを立てるとFIにも仕訳が計上されるようになります。
■評価方法定義(SPRO>管理会計>製品原価管理>原価対象管理>指図別製品原価>期末処理>仕掛品>評価方法定義 (実際原価))
管理領域/結果分析バージョン/結果分析キーごとに指図ステータスに応じて仕掛品計算でどの仕訳を起こすかを定義します。
ステータスがREL(リリース)であれば製造中なので「仕掛品(B/S)/在庫振替(P/L)」という仕訳で指図に溜まった費用を仕掛品に振り替えて、DLV(納入済)やTECO(技術的完了)であれば製造完了しているので「在庫振替(P/L)/仕掛品(B/S)」という仕訳で戻す、といった要領です。
■割当(SPRO>管理会計>製品原価管理>原価対象管理>指図別製品原価>期末処理>仕掛品>定義: 仕掛品決済の転記ルール)
FIで仕掛品の仕訳を計上する際の具体的な勘定コードを設定します。
製造指図への実績計上と期末処理
カスタマイズの準備が整ったら、実際に製造指図にコストを計上して期末処理を回していきたいと思います。
■前提事項
(1)本章では下記赤枠部分の実績計上を例にオペレーションを行います。(半製品の生産工程は製品と同様のため割愛します。)

(2)本章では下記の流れでオペレーションを行っていきます。

■オペレーション操作
①製造指図の登録(Tr-cd:CO01)
製造する品目とプラント毎に製造指図を発行します。
「管理データ」タブで原価計算関連の設定(原価計算表や結果分析キーなどの設定)を行います。
※PPを利用している場合はMRPを回して計画手配から製造指図を発行するケースが多いと思いますが、本稿の主題は原価計算であるためマニュアルで製造指図を発行しています。
②製造指図のリリース(Tr-cd:CO02)
①で登録した製造指図に対して、リリースボタンを押下して指図を発行します。
これにより、指図ステータスがREL(リリース)に更新されて、実績の計上が行えるようになります。
③構成品出庫(Tr-cd:MIGO)
①で登録した製造指図に対して、構成品出庫(材料や半製品の指図への入庫)を行います。
画面上部のプルダウンから「出庫」と「指図」を選択して①の製造指図番号を入力すると、明細画面にBOMの構成が展開されて製造に要した各品目の数量を入力することができます。
本例のBOMでは原材料を3PC使う予定でしたが、4PC使ったことにして入力を行います。(後続で原価差異の確認をするため)
保存すると以下のような会計伝票が転記されます。
| 借方 | 貸方 | ||
| 在庫振替(半製品)(P/L) | 11,600 | 半製品(B/S) | 11,600 |
| (製造指図) | |||
| 原材料費(P/L) | 12,000 | 原材料(B/S) | 12,000 |
| (製造指図) |
④仕掛品計算 (Tr-cd:KKAX)
ここでいったん月末を迎えたと仮定して、仕掛品の計算を行います。
①の製造指図と仕掛品計算の対象となる会計期間を指定して実行を行います。
処理が正常終了してもこの時点では会計伝票の転記は行われません。後続の指図決済処理により計上されます。
④指図決済 (Tr-cd:KO88)
仕掛品計算と同じ要領で、①の製造指図と仕掛品計算の対象となる会計期間を指定して実行を行います。
正常終了すると以下のような会計伝票が転記されます。
| 借方 | 貸方 | ||
| 仕掛品(B/S) | 23,600 | 在庫振替(仕掛品) (P/L) | 23,600 |
| (製造指図) |
⑤活動消費(Tr-cd:CO11N)
製造に要した実際の作業時間を計上します。
①で登録した製造指図を入力すると、作業手順や作業区にもとづいて段取や組立などの各作業工程ごとに実績工数を計上する画面が表示されます。本例の組立作業の標準所要時間は2.5Hですが、実績としては4Hで計上します。(後続で差異計算を確認するため)
保存すると以下のような会計伝票が転記されます。
| 借方 | 貸方 | ||
| 段取作業費(P/L) | 500 | 段取作業費(P/L) | 500 |
| (製造指図) | (原価センタ) | ||
| 組立作業費(P/L) | 3,600 | 組立作業費(P/L) | 3,600 |
| (製造指図) | (原価センタ) |
⑥完成品の振替(製品の入庫) (Tr-cd:MIGO)
①で登録した製造指図に対して、完成品の入庫を行います。
画面上部のプルダウンから「入庫」と「指図」を選択して①の製造指図番号を入力して、明細のOKフラグを立てて保存すると、以下のような会計伝票が転記されます。※標準原価(23,800円)で払出が行われます。
| 借方 | 貸方 | ||
| 製品(B/S) | 23,800 | 指図仮勘定(P/L) | 23,800 |
| (製造指図) |
⑦指図ステータス更新(TECO)(Tr-cd:CO02)
製造が完了したので指図ステータスを技術的完了(TECO)にして保存します。
⑧仕掛品計算 (Tr-cd:KKAX)&指図決済 (Tr-cd:KO88)
TECOまで進んでいるので仕掛品の計上はありませんが、前回計上した仕掛品を取り消すために回す必要があります。
実行方法は④の手順と同じです。
決済まで行うと、以下の仕訳が計上されます。
| 借方 | 貸方 | ||
| 在庫振替(仕掛品)(P/L) | 23,600 | 仕掛品 (B/S) | 23,600 |
| (製造指図) | (製造指図) |
⑨差異計算(Tr-cd:KKS2)&指図決済 (Tr-cd:KO88)
最後に指図に計上された実績と標準原価の差額を計上します。
①の製造指図と差異計算の対象となる会計期間を指定して実行を行うと以下の仕訳が計上されます。
※決済は通常⑧と⑨で分けて実施しませんが、本稿では手順ごとに仕訳を確認するために分けています。
| 借方 | 貸方 | ||
| 価格差異(P/L) | 3,900 | 指図仮勘定(P/L) | 3,900 |
| (製造指図) |
最後に
本稿では指図への実績計上と月末処理(仕掛品計算、原価差額計算)の手順を見てきました。
処理や仕訳の流れが複雑で、自分が何をしているのか見失いがちな論点だと思いますので、ここでもやはり全体像を押さえたうえで「この手順では一体何をしているのか」を1つずつ丁寧に理解していただければと思います。
次回は本稿で計上した原価差額を売上原価と在庫に按分する処理について見ていきたいと思います。

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